CorelDRAW X3 解説書 9月22日発売 ― 2006/08/16 11:35
いつの間にかコーレル株式会社サイトで、解説書「CorelDRAW X3オフィシャルガイド 基礎テクニック編」の発売が告知されていたので、その著者としても、情報を公開しておきましょう。
- タイトル: CorelDRAW X3オフィシャルガイド 基礎テクニック編
- 著者: 黒住浩司
- 出版: カーネルメディア
- ISBNコード: 4-903420-03-5
- ページ数: 416ページ(カラー128ページ)
- 価格: 4,410円(税込)
- 発売日: 2006年9月22日(予定)
著者に断りなく書名が決まってしまっていることは、はっきり言って不快なのですが、ね。
本書は、CorelDRAW X3の解説書です。PHOTO-PAINT X3やCorel CAPTURE X3は、対象としていません。主要には以下の3章で構成されています。
- PART-3 新機能と改良
- PART-4 基本操作ガイド
- PART-5 イラストの作成
新機能と改良
この章では、CorelDRAW X3の新機能と機能拡張を詳解しています。Corel本社もしくはコーレル社のサイトやパンフレット等で紹介されているものよりも、当然、詳しい内容です。
基本的には、Corel社の「CorelDRAW Graphics Suite X3 Reviewer's Guide」(英語、PDFパンフレット)を基にして、それぞれの機能を確認した上で紹介しています。また、同資料に触れられていなくても、X3英語版を半年近く使い続けている中で確認した機能や、Corel社ニュースグループなどで触れられていたものなども検証し、追加しています。
まあ、当サイトの「CDGS X 新機能/拡張」のうち、CorelDRAWの分をピックアップして、少しだけ詳しくしたような内容です。
基本操作ガイド
この章では、セットアップから始めて、CorelDRAWの起動、インターフェイス、基本図形オブジェクトの作図方法、オブジェクトの編集方法、ファイル操作、そして印刷と、基本的な操作の流れに沿って機能を解説しています。
それぞれの項目について、詳細に解説しているのは当たり前ですが、あらかじめお断りしておくと、CorelDRAWのすべての機能については触れていません。また、PowerTraceのような新機能についても、敢えてピックアップすることはしていません。あくまでも、CorelDRAWを扱う上での、基礎的な操作についてのみ、取り上げています。
イラストの作成
この章では、曲線オブジェクトの編集と作図方法――すなわちベジェ曲線の操作方法について、扱っています
内容は、
- 基本図形からイラストを描く
- ベジェ曲線で直接描く
の2つに大きく分け、「1」は基本図形を合成した上で、その曲線をベジェ曲線の操作方法で編集するというものです。「2」は、直接ベジェツールで曲線を描く方法を、基本から取り上げています。
ともに、練習用サンプルファイル(本書発売後に当サイトで公開します)を使って学ぶ、「講義」スタイルを取っています。当然、そのほとんどの操作手順も、明記しています。
もともと、この内容は、私が職業訓練で教えている、Adobe Illustratorの基本操作についての講義を、CorelDRAWに差し替えたものです。もちろん、単にIllustratorの“真似”をしているわけではありません。訓練校の講義自体、私がCorelDRAWで得た技術をIllustratorに差し替えたものなので、巡り巡って本来の講義内容になったというわけです。一方で、実際の授業の中で講義の中身を研鑽、向上させてきたので、そうした成果は本書に還元されています。一般的に、ベジェ曲線の操作は難しいとされていますが、なるべくそれを体験的に学習できるように努めたつもりです。
本書の目次を見ると、上記の2項目しかサブタイトルに掲げられていませんが、この部分で88ページを費やしているように、実質的に「基本操作ガイド」とともに本書の中核を成しています。
CorelDRAW関連の解説書は、最近では同じカーネルメディアから「CorelDRAW Essentials 2オフィシャルガイドブック」が刊行されていますが、同書と本書では、その趣は大きく異なっています。本書は、「CorelDRAW Essentials 2オフィシャルガイドブック」のような、作例主体の操作ガイドではありませんので、ご注意ください。また、文章量も格段に多くなっています。もちろん、ほとんどの項目には、CorelDRAW X3で作図した詳細な図解も入れてあるので、ご安心ください。
以上の内容で、本書の約400ページを埋め尽くしてしまったので、インタラクティブツールなどを使った応用的な操作や、テキストレイアウトやカラー分解などのDTP操作、Web画像/ページ作成といった部分には触れていません。基本操作とベジェ曲線操作の習得に、ターゲットを絞ったものになっています。
ページ数が無限であるなら、例えば作例紹介として、プレゼンテーション資料「トラストDE」の作成手順(実は、すでに作成済みなのですが...)のようなものを載せたかったのですが、今回は割愛しました。また、先ごろ公開した「CorelDRAW X3 新機能ツアー①」や「Flashエクスポートの探求」も、実は本書の構想に入っていたのですが、収まりきらないのでWeb上で放出した次第です。
実は、さらに以前からの構想として、CorelDRAW全機能のコマンドリファレンスも企画していたのですが、「ファイル」メニューの項目を途中(「送る」コマンド)まで執筆したところ、それだけで3万字を超えてしまいました。全コマンドとツールを網羅しようとすると、一冊の本でも収まるかどうかといった具合なので、やはり今回は断念しました。
私自身の姿勢としては、質の面でいい加減なものや、妥協した内容のものは作る気がないので、今回は、「基礎テクニック」としてまとめられるものを、その内容を減ずることなく掲載しました。特に、「ベジェ曲線で直接描く」は、ほんものの「基礎講座」(それを本書のタイトルにしたかったのですが...)として、役立つ内容になっていると思います。
なお、本書をセットにしたCorelDRAW Graphics Suite X3も発売されます。
- CorelDRAW Graphics Suite X3 オフィシャルガイドブック付き
- 価格: 59,955円(税込)
- 発売日: 2006年9月22日
これは、CDGS X3通常版との組み合わせです。
とにもかくにも、CorelDRAW 8以来、7年ぶりで本格的な解説書を執筆できたことは、よかったと思います。そして、当時としては何よりも詳しかった拙著「CorelDRAW 8J DESIGN GUIDE」ですが、私のCorelDRAWに対する造詣は、より深くなっています。それが今回の解説書で、読者の方のお役に立つことを願っています。
Flashエクスポートの技術的探求 掲載 ― 2006/08/12 16:16
「技術・技法」コーナーに、記事「Flashエクスポートの技術的探求」を掲載しました。
この記事は、Microsoft Internet ExplorerのActiveX仕様変更に伴うFlashの有効化を回避する方法を、技術的に解説したものです。
有効化(一度画像をクリックしなければならないこと)を回避するには、JavaScriptでFlash画像を読み込ませるようにしなければなりませんが、CorelDRAW 10, 11, 12, X3のFlashエクスポートでは、こうしたスクリプトは記述されません。
そこで、CorelDRAWのFlashエクスポート用テンプレートを編集し、エクスポート時にスクリプトもHTMLファイルに書き込まれるようにする方法と、それを外部ファイルに保存する方法について、解説しています。
なお、ある程度JavaScriptについて理解していないと、この記事の内容は解りづらいかもしれませんが、ご容赦ください。
CorelDRAW X3新機能ツアー① 掲載 ― 2006/08/10 01:09
CorelDRAW Graphics Suite X3日本語版発売記念の続きとして、「技術・技法」コーナーに記事「CorelDRAW X3 新機能ツアー①」を掲載しました。
記事の内容は、幾何学模様のパターンを作成する具体的な手順を通して、次の新機能を紹介していきます。
- フィレット/スカラップ/面取り
- ノード数の削減
- スマート塗りつぶし
- 連続複製
- べベル(エンボス)効果
これらのうち、特に「スマート塗りつぶし」機能については、深く掘り下げて探求しています。
ほぼ、解説書1章分ぐらいの分量がありますので、面白い内容に仕上がっていると思います。もちろん、ソ連邦の官僚的計画経済のように、ただ文字数の量的な外延的拡大を目指しているわけではなく、質の面でも、それなりの体裁は整えてあります。CorelDRAW X3を使いこなそうと考えている方は、御一読ください。
なお、「①」と言うからには、もしかすると続きがあるかもしれません...
X3 ドロップシャドウの応用 ― 2006/07/05 00:58
「技術・技法」コーナーに、記事「X3 ドロップシャドウの応用」を追加しました。
昨日のCorelDRAW Graphics Suite X3日本語版記者発表会で実演したもののうち、ドロップシャドウ効果の応用について解説したものです。
Embroidery Effect 提供開始 ― 2006/04/25 01:15
先に紹介したCorelDRAW 12, X3用プラグイン、「CorelDRAW Embroidery Effect」の提供が開始されています。同ダウンロードページから、セットアップファイル
- 「DrawingsEmbroideryEffectESD.exe」(サイズ: 9.8MB)
を入手できます。
このファイルを実行すると、セットアップファイル群が
- 「C:\Program Files\DRAWings(R) Embroidery Effect Setup Files」フォルダ
に展開され、そこから
- 「C:\Program Files\Embreoidery_Effect」フォルダ
にインストールされます(標準設定の場合)。
CorelDRAWへの組み込みは自動で行われ、メニュー「効果」に「Embroidery Effect」コマンドが追加されます。ちなみに、インストールしたパソコンにはCorelDRAWの8, 9, 10, 11, 12日本語版、X3英語版が同居しているのですが、キチンと12, X3だけにコマンドが追加されました。
操作はいたって簡単で、まずオブジェクトを選択し、それから「Embroidery Effect」コマンドをクリックするとダイアログが表示されます。ここで解像度と「生地の種類(Fabric type)」を選択します。種類は
- Heavy
- Normal
- Normal Light
- Light
- Ultra Light
の5種類で、布目の粗さを表しています。とりあえずHeavyを使ってみると、この効果の何たるかがよくわかるでしょう。なお、ダイアログは英語表記ですが、CorelDRAW 12日本語版でも問題なく動作します。
ダイアログで「OK」ボタンをクリックすると、刺繍の質感に変換されたビットマップ画像が、ドキュメント内に生成されます。以下の画像が、適用結果の見本です。

CorelDRAW初のオリジナルプラグインが登場したわけですが、CorelDRAWの様々な可能性を広げるものとして、期待できるでしょう。
CorelDRAW Embroidery Effect ― 2006/04/24 21:06
Corel社よりCorelDRAW 12, X3用プラグイン、「CorelDRAW Embroidery Effect」の無償提供がアナウンスされています。
“Embroidery Effect”とは、直訳すれば“
DRAWingsは服飾業界向けの特定用途アプリケーションで、CorelDRAWのインターフェイスでイラストを作図し、それを刺繍の絵柄に変換することができます。もちろんDRAWingsは、実際の刺繍製品を製造するためのデータまでを出力することができ、そのため10万円を超える高価なソフトになっています。しかも、英語版のみです。
これに対し、無償提供される今回のプラグインは、ベクトルイラストを刺繍風のビットマップ画像に変換するだけの機能しかありません。実際の繊維製品を製造するまでのワークフローを、さすがにCorel社も無償提供はしないでしょう。
このプラグインの役割は、服飾デザイナー等が、刺繍の図案をより本物らしくプレゼンテーションできるような作業環境を、提供するものと言えます。もちろん、製品を製造する側がDRAWingsを導入していれば、デザイナーからCorelDRAWデータを受け取ることで、製造までの一貫したワークフローを構築できます。紙媒体におけるDTPデザイナーと印刷会社との関係と、同じようなものですね。
まあ、こうしたワークフローを構築するには、“入口”にCorelDRAWを使いこなせるデザイナーの存在が必要ですから、Adobe Illustratorにどっぷりと浸かってしまっている日本では、やはり難しいことかもしれません。それでも、こうした部分に、CorelDRAWの可能性があるとも言えます。もちろん、この記事を読んでくださった繊維/服飾業界の方、私がCorelDRAWでデザインを制作することもできますよ。
という営業活動はさておき、このプラグインを、“業界向けの特殊機能のみ”、と一般ユーザーが切り捨ててしまう必要はありません。それでは、もったいないお化けに呪われてしまいます。単純に、「刺繍風の画像を作る特殊効果」だと考えて、趣味のイラストに使っても構わないのですから。もともと、DRAWingsが初めて登場した際に、私は“この刺繍効果だけでもCorelDRAWで使えたらいいのにな~”と気楽に考えていました。それが今回、やっと実現したわけです。服飾業界に関係ない人でも、イラストの表現力を高めるバリエーションのひとつとして、「Embroidery Effect」は手軽に役立つでしょう。
なお2006年4月24日現在、「Embroidery Effect」の紹介ページは存在するものの、同ダウンロードページで「ダウンロード(Download)」ボタンをクリックしても体験版ソフト一覧ページに切り替わるだけで、提供準備はまだできないようです。ダウンロードが可能になり次第、追加情報を提供していきたいと思います。
X3 印刷の不具合と思いきや... ― 2006/03/30 21:58
「えぇ、印刷が...」という冤罪事件
一昨日、旧バージョンで作成したファイルをCorelDRAW X3で印刷したところ、黒い文字と、等高線オブジェクトが見事に色抜けしてしまいました。「これは何たる不具合か...」と驚天動地、それでも冷静さを装ってCorelDRAW 12で印刷し直してみると、「12よ、お前もか...」と絶句。X3は己だけでなく、12まで道連れにしたのか(以前、12では正常に印刷できていました)と、天を仰ぎかけたのですが...
やはり、地に暮らす人間、自分の足元をよく見つめ直すべきでした。プリントアウトの状態を確かめ、インクジェットプリンタを調整すると、キチンと印刷されました。そうです、黒インクのノズルが、目詰まりしていたのです。等高線オブジェクトも、色が黒かったので、かすれてしまっただけでした。CorelDRAWは、無罪だったのです。
日頃、CorelDRAWの“バグ”に関する非難や冷笑に、呆れて顔を背けている私だったのですが、いざ至近で異常が起きると、CorelDRAWに嫌疑をかけてしまう...。そんな人間の弱さ、考える葦の儚さに、自ら猛省を促した次第でした。
当サイトの「質問コーナー」にも、“まずCorelDRAWにバグありき”という、不具合に関する質問が寄せられることがあります。しかし、冷静な原因の見極めは、ユーザー側にも求められるでしょう。
市場原理の憂鬱
余談ですが、今回の件で、インクジェットプリンタを買い換えようかという邪念が、脳裏を過ぎりました。そこでEPSONのサイトを調べてみた(私はEPSON派なのです)のですが、A4インクジェットだけでも3系統5機種以上もあることに、うんざりさせられてしまいました。これらの仕様を比較するだけで、一苦労です。旧機種や他メーカの製品まで加えたら、天文学的な数字と言ってしまうのは相対性理論並みに大袈裟ですが、せめてコンビニのショーケースに並ぶ缶ビールの種類ぐらいにはなるでしょう。
そう、この十数年来、ビールの種類にまで“消費者の選択の自由”が保障され、私は辟易していました。これが、資本主義、市場経済の優位性と謳われているのですから、インクジェットプリンタ市場も、同じ毒に侵されているのは当然の成り行きですね。
その点、プロ向けドローソフトと言えば、CorelDRAW、Illustrator、いちおうFreeHandの御三家しか選択肢がありません。ですから、迷わずCorelDRAWを選べる幸せを、私は噛み締めています。
トリミング技法 ― 2006/01/03 01:53
「技術・技法」コーナーに記事「用紙からはみ出した図形を消す方法」を掲載しました。
この記事では、パワークリップとレンズ効果を使って、図形をトリミングする方法を紹介しています。「質問」コーナーに寄せられた質問を元に、この解説を執筆しました。